「シズル感」のある動画とは一体何なのか考察してみた。

写真・映像について

「シズル感」とは一体何なのか。

少し前からよく聞くし、なんとなくのイメージは浮かぶが、「シズル感」とはこういうもの!と説明できるほど明確には理解していない。
おそらくシズル感という言葉に関しては、皆さんも似たような認識ではないでしょうか。

今回はこの「シズル感」という分かりやすいような、ややこしいような言葉について僕なりに考察していきたいと思います。

 

ステーキを売るな、シズルを売れ!

この言葉はホイラーさんという、死ぬほどセールスコピーを分析しまくった人の有名な言葉で、シズルというワードが初めて使われたのはこの言葉です。

これはどう言う意味かを簡単に説明すると、
「ステーキはその質や量で売れるのではなく、肉が焼けるときの音や匂いなどを想像して食欲が刺激されるから売れる。そのためステーキそのものを売ろうとするのではなく、ステーキを食べたくなる理由を売りなさい」
みたいな意味になります。

要するにシズルとは「顧客の五感を刺激し、本能的に購入したくなる理由」になります。

 

そもそもシズルは日本語ではない

そもそもこのシズルという言葉、実は日本語ではないのです。
(私は勝手に「ワビサビ」的な昔からあるやつだと思ってました)
お肉を焼くときのジューという音を、アメリカでは擬音語で「sizzle」と発音するらしく、それがそのまま日本でも「シズル」として広まったようです。

どう考えてもお肉焼くときに「シズルッ! シズルッ!」なんて音は鳴っていないと私は思いますが、まあホイラー兄さんが言うなら仕方ありません。

 

では、どうやってシズル感を生み出すのか

上記まででシズルが一体どんなものかは、ある程度理解できたかと思います。
ですが我々が本当に知りたいことは、そんなことではありません。

「どうすればシズル感を生み出すことができるのか」ということが重要なのです。
これが分からなければ意味を理解していても、自分のコンテンツには何の改善も見込めません。

※ちなみにこの記事には、美味しそうに見せるための撮影テクニックについては、一切言及しません。検索すればすぐに出てきますし、それはあくまでシズルの本質につながるものではなく、コンテンツの質を引き上げるだけに過ぎないからです。

 

シズルとは、美味しかった瞬間のフラッシュバック

私も長いこと考えました、いわゆるシズル動画をたくさん拝見し、PinterestやInstagramで「シズル」を検索し、色々悩みました。
その結果出た答えが表題の通りです。

例えば見たこともない料理があったとしましょう。
使われている具材も一切見たことがないものです。
この場合、シズル感を演出することは不可能ではないでしょうか。

なぜなら食べたことがないから。
その料理の味はもちろん食感や匂い、調理工程が分からないからには、何を撮れば見ている人の五感を刺激することが出来るかも分からないからです。

自分が過去に料理を食べた時に感じた味や匂い、食感を想起させることでシズル感が生まれるのではないでしょうか。
誰もがその料理を食べた時に感じた「あの美味しさ」をフラッシュバックさせることこそ、シズル感を生み出す最も有効な方法だと思います。

 

美味しかった記憶から逆算して映像を組み立てる

前述の通り、シズル感を生み出すためには「美味しかったあの瞬間」をフラッシュバックさせる仕組みが必要となります。
そのためには料理を見て「どこを撮れば美味しそうに見えるか」を考えるのではなく、「あの美味しさを想起させるにはどこを撮影すべきか」を考える必要があります。

例えばこのステーキの写真を見てください。
※私が撮影したものではありません。

いわゆるシズル感に溢れている写真だと思います。
ではなぜシズルを感じるかお分かりでしょうか?

先ほど言っていた美味しかった記憶から逆算して考えてみると、

  • 噛み始めた瞬間にこんがりした表面が、香ばしい匂いとともにサクッと歯に当たる
  • そこからさらにジューシーなレアな部分噛み締めると、閉じ込められていた肉汁が溢れ出す
  • ステーキの端に少し残された脂身は、プリプリとした食感と深みのある脂をもたらす

これらの要素が写真の中で表現されています。
逆に言うと、それら以外の無駄な要素は徹底的に排除されているため、よりダイレクトに伝わってきます。
真っ白なお皿についた脂の汚れでさえも、脂身の感覚を想起させることに一役買っています。

ちなみに画面奥の野菜は、シズル感を表現するためというよりかは、構図や色彩といった写真の質に関わってくる部分で、あまり関係ないと思われます。
ピントはもちろん外されていますし、何より野菜がステーキを食べた時の感覚を想起させるものではないからです。

 

シズルは食べた時の感覚に起因する

ステーキ以外にもハンバーグであれば、真ん中からぶった切った時に中から肉汁が溢れ出てくる描写。
これも一口目を切り分けた時のあの感覚や、口にした時の噛んだ瞬間に口いっぱいに肉汁が溢れ出す瞬間がフラッシュバックするため、シズル感につながっています。

うどんであれば、白く輝く光沢感や、お箸で持ち上げた時にうどんがくねる描写。
これもうどんをすすった時のツルツルとした感覚を光沢感で、噛んだ時に跳ね返ってくる弾力感を麺のくねりで、見事にフラッシュバックさせることに成功しています。

このように写真や動画にシズル感を生み出すには、全ての描写に食べた時の感覚をフラッシュバックさせる仕組みを作ることが重要です。

 

ストーリーや状況からシズル感を生み出す

先ほどまでのシズル感の演出法は、あくまで料理を目の前にし食べる瞬間にフォーカスしたものです。
ですが食事というものは、料理が出てくる前から始まっているのです。

皆さんも「空腹は最高のスパイス」という言葉は耳にしたことがあると思います。
同じ料理を食べるとしても、お腹ペコペコで食べるのかどうかで美味しさが変わってきますよね。

そのほかにも、行きつけのレストランが閉店すると知って、最後に訪れた時の料理には、いつもと違う感覚を覚えると思います。

そうです、そうなんです。
ストーリーや状況をうまく取り入れることができれば、それもシズルとなるのです。

 

料理以外の要素を組み込んでみる

映像であれば複数のカットのうちで、料理だけでなくそれを取り巻く状況やストーリーも組み込んでみましょう。
写真であれば組み写真に1枚そういった写真を入れるのも有効だと思います。

例えばカップヌードルを撮影する場合、カップヌードルだけを映し続けるのではなく、

  • 家族が寝静まった深夜のキッチン
  • 夜釣りの途中に漁港で休憩しているシーン
  • 幼い我が子が自分のために、一生懸命開封してお湯を注ぐシーン

といった、ストーリーや状況を説明する描写を取り入れることで、視聴者の没入度は増し、ただのカップヌードルにエモーショナルな効果をつけることが出来ます。

めちゃくちゃ寒いところで食べるカップヌードルの味と温もりは、どんな高級料理にも勝ります。

 

シズル動画はいかに自分の味覚と経験を盛り込めるかが鍵

ということで色々と書いてまいりましたが、今一度シズル感を演出するにはどうすればいいかをまとめてみたいと思います。

  1. その料理のどこが美味しく感じるかを明確化し、その部分を最大限に生かした撮影/編集を行う
  2. その料理を食べる場合に最適だと自分が思う状況・ストーリーを構築し、それを動画内で演出する

上記の2点が特に重要だと思います。
これが出来た上で、初めて構図やライティングなど「伝えるための技術」の出番かなと自分は思います。
最悪これは出来ていなくても構わないと思います。
上記の2点さえ出来ていれば、十分にシズル感は表現できると思います。

にも関わらず、構図やライティングにしか気を配らず、それで満足してしまっている料理動画がいかに多いことか、、、
シズル動画に挑戦する際は、あなたなりの美食観や食事の経験を大事にしてください

 

私のシズル動画を最後にお披露目

「ここまで散々好き放題書きまくっているお前のシズル動画はどんなもんじゃい」と思ってる方もいるかもしれません。
ですので最後に私が制作したシズル動画をお披露目させていただいて、お別れとしましょう。

【シズル動画】15秒で分かる「ペペロンチーノ」という名の芸術

動画の尺は20秒と短いですが、僕のできる限りを尽くした作品になっています。

唯一残念なのは、10秒程度の作品という条件で制作したため、動画内でこの料理の状況やストーリーを演出するということが出来ていないという点です。
どうしても尺が短いと料理以外の映像を入れ込む余裕がなく、ストーリー性や状況でシズル感を演出することは諦めざるを得ませんでした。

その代わり、10数秒という短い時間でコンテンツ性を生み出すため、BGMを導入し「リズム感」を演出しました。
またBGMを導入したことにより、状況やストーリーとは言えずとも、ペペロンチーノという単純にして奥の深い料理をアートとして認識してもらうための雰囲気を作り出すことができました。
youtube内での動画タイトルや概要欄でのコメントにも、そのエッセンスを前面に押し出しています。

もしよろしければ、ご感想やコメントなどドシンドシンに募集しております。

ではまた!

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松尾 由佑佐

松尾 由佑佐(まつお ゆうすけ) 1994年〜
大阪生まれ大阪育ち。

新卒で入った富士通グループを1年半で退社。
現在はフリーのビデオグラファーとして、
企業/個人を相手にプロモーションビデオや、
イベントのアフタームービーを制作。

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